目が醒めるとわたしは「よわこ」でした。
昨日まではたしか別の名前だったのに、今朝は思い出せません。ベッドの上で頭をちょっと上げてみたら、薄いブルーの毛布からのぞいた自分の足の向こうに、いつもと変わらない自分の部屋が見えました。もっと手前にズームインすると、わたしの顔のてっぺんに尖ったものがぼんやり見えます。それはくちばしで、「よわこのしるし」でした。「わたしは鳥になったのかしら?」横になったまま目をつぶって羽ばたいてみましたが、翼はなくて飛べませんでした。それどころか、世界中が悲観的に見えて、何もする気が起こりません。そのうち猫のクアチがお腹をすかせてやってきて、わたしの顔を見ると縞模様の長い尻尾をアライグマみたいに太くして、シャーと威嚇して逃げていきました。やれやれ夢じゃなさそうだ・・・。わたしはベッドから抜け出して考えました。「ほんとうのわたしはどこへ行ってしまったのか?」父に聞くと、パソコンの前で携帯電話とマウスを握ったまま「何か言った?」と、取り合ってくれませんでした。母に聞くと、ギターを弾いていた母は「あなたは生まれたときから、ずっとよわこでしょ」と、Aマイナーセブンスを鳴らして言いました。
というわけ?で、どうやら今日がわたしの誕生日みたいです。