あちこたねぇ
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のらぼうな

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 04 10th, 2010   Yowako  

よわこの日記75
今日も、わたしはよわこです。
母方のおばあちゃんから、電話がきました。「ノラボーナがいっぱいあるから、お昼に食べにおいで。」 …ノラボーナってなに? イタリア料理? カルボナーラの一種? トスカーナ地方の名産とか? …よくわかんないけど、父も母も仕事なので、ひとりで電車に乗ってオオクラヤマに行きました。
おばあちゃんのマンションに行くと、台所が緑色。テーブルもシンクもレンジも葉っぱだらけ。「どどどうしちゃったの、おばあちゃん!」「近くの八百屋さんで売ってたの。『のらぼう菜』…珍しいでしょ。懐かしくて、つい。」 ノラボーナの正体は、アブラナに似た大きな菜っぱでした。なーんだ。イタリア料理じゃなくてがっかり。 「田舎にいる頃、ひいおばあちゃんがよく食べさせてくれたのよ。」「ふうん。」
おばあちゃんの故郷はヒノハラ村。東京のいちばん西の、東京と思えないのどかな山の中です。はじめて行ったとき、緑の匂いがむんむんして、小さかったわたしは外国に来たかと思いました。のらぼう菜はそのあたりに伝わる野菜。寒さに強く、冬のあいだ育って春のお彼岸のころ収穫するので、『春を告げる野菜』と呼ばれているそうです。それにしてもこんなにたくさん買うなんて、おばあちゃんよっぽど懐かしかったのね! 「今年の冬は寒かったからね。冬が寒いと野菜は甘く育つんだよ。」「へえ~、そうなんだ。」 お昼は、のらぼう菜のおひたし、胡麻和え、炒め物、てんぷら、お吸い物…のらぼうなづくしでした。味は菜の花に似てるけれど苦くないし、ほうれん草ほど甘くない。クセがなくてけっこういけるかも。
食べながら、亡くなったひいおばあちゃんのことを思い出しました。杉の木に囲まれたおうちで、テレビのお相撲を見てたひいおばあちゃんは、ぺちゃんこの座布団の上に100年前から座ってる木彫りのお人形みたいでした。生きてるだけで、スゴイと思った。そうかと思うと、突然ニヤッと笑って「貴乃花はいい男だねえ~。」とか言うからびっくり。…ひいおばあちゃんから伝わってきた味だと考えると、のらぼう菜もなんだか特別な感じがします。 「のらぼう菜はガンコな野菜でね、遺伝子組み替えたり、ほかの菜っ葉と交配できないんだって。だからいつまでものらぼう菜のまま。これ食べたら、きっとよわこちゃんも強くなるよ。」「うん。」
帰りの電車から、ぼんやりおぼろ月が見えました。『菜たね月』です。寒いと思っていたら、いつのまにか春なのね。あ~お腹いっぱい!やれやれ、今夜は緑色の夢を見るかもしれない。