あちこたねぇ
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宮原芽映
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2枚ワンセット
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ケヤキ・ラッパー

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 08 31st, 2007   Yowako  

よわこ d010
今日も、わたしはよわこです。
同級生のうらこちゃんが、木と友達になる方法を教えてくれました。「木にさわるといいよ。抱きつくと元気出るよ。体にたまった悪いエネルギーを、木が吸い取ってくれるんだって。おっきい木がいいかも。」…わたしもやってみよう。でも、家の近くに大きい木はありません。原宿で買物したついでに、表参道のケヤキ並木へ行ってみることにしました。表参道は人がいっぱいでしたが、木にさわっている人はひとりもいませんでした。…ていうか、誰も木の存在さえ見えてないみたいです。明治通りから青山通りに向かって、1本目のケヤキにさわりました。木の肌はひんやりして、ざらざらしてて硬かった。でも何だか病気みたい、所々まだらに黒ずんでて元気なさそう。「なんでさわってんの?」ふいに頭の上で声がして、びっくりして見たけど誰もいません。「くすぐったいんだよ。さっきから。」喋っていたのはケヤキの木でした。わたしは人に聞こえない小さい声で、うらこちゃんに教わったことを木に説明しました。「なら明治神宮へ行きな。この辺じゃ効き目ないよ。あーねむい。」「ねてないの?」「ここはうるさいし、夜も明るくて寝られやしないの。オマケに空気も悪い。向かいのやつは喘息で毎晩咳き込んでるよ、かわいそうに。俺なんかアレルギーだし。」「何の?」「スギ花粉症。」それからケヤキの木は、自分たちが今までどれだけ人間に尽くしてきたか、それに対してどれだけ人間がひどい仕打ちをしてきたか、ラップで歌い始めました。♪「グチリグチリグチルラー、グチリグチリグチルラー、オレたち酸素作り出す元祖、原始地球は植物のホーム・ランド、だけどある日人間たちが現れ、伐られ削られ焼かれ植えられ、燃料供給、紙・家具提供、防げ暴風・土砂崩れ、阻め疫病ペスト大流行、オレたちベストを尽くしてきたぜ、イエー、グチリグチリグチルラー、グチリグチリグチルラー、石油発見する以前、森を資源に伐採した人間、国は栄え土地は砂漠、なくなりゃ侵略、他国の森奪うために戦争、異国の神追い出すために伝導、森は焼かれ魔女は火あぶられ、神は金、経済発展・兵隊派遣、自然守れは偽善、口先だけのエコはびこるエゴ、神は去り問われる倫理、グチリグチリグチルラー、グチリグチリグチルラー、(間奏8小節) 日本じゃ後期江戸時代、お上の資材盗めば死罪、枝1本が腕1本、幹1本が首1本、それくらい貴重品だったオレたち、なのに今じゃおまえらの都合次第、土のない土地に植えられ、クリスマスに電飾ぶらさげられ、邪魔になりゃ伐り倒され、ほったらかされ枯らされ、やってらんねーYo。Yo-Yo、ねーちゃん、もっと勉強しな、Yo。」…作詞家の母が聞いたら怒りそうな、理屈っぽい歌詞でした。それにしてもよく喋る木だわ。「そんなに喋れるのに、なぜ黙ってるの?」「そんなヤバイこと!滅多やたら喋ったら研究材料にされるか、うるさがられ伐られるのがオチよ。それにもしも犯罪目撃したらどうなる?こっちは逃げられないのよ。口封じに何されるか。」「あのう…」わたしはドキドキしながら聞いてみました。「抱きついてもいいですか?」「バカ言うな。俺にも選ぶ権利があるだろーが。」……断られてしまった。「じゃあ帰ります。」と言うと、「またな。」と木が言いました。「ありがとよ。久々にグチったお陰で、スッキリ元気が出たぜ。Ya また遊びに来いよな!」…やれやれ。こっちはグチられたおかげで、すっかりくたびれてしまいました。でもお友達になれたみたいだから、まあいーか。不思議なことに、道を歩く人たちは誰もケヤキの声が聞こえなかったみたいです。