あちこたねぇ
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宮原芽映
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踊る蜘蛛

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 10 26th, 2011   Yowako  

よわこ
今日も、わたしはよわこです。
秋になりましたが、まだ暑いです。温暖化はだいじょうぶかしら。
お風呂にお湯を入れようとしたら、ちいさなクモが、バスタブのまんなかでダンスを踊っています。あぶないあぶない、もうちょっとで流してしまうところだったわ!
「クモさん、どいて。」「…今練習中なんだ。邪魔しないで!」 クモはそう言いながら、8本の脚を上げたり下げたり、右に行ったり左に行ったり、真剣な目つきでいっしょうけんめい踊りつづけています。でも、ちっとも上手にならないみたい…何度やっても脚と脚が絡まってしまいます。そのうちに、は~っと小さな糸を吐いて、まるまってしまいました。
「僕ってだめなクモ…ショウジョウバエを捕るの苦手だし。花は好きだけど虫はキライなんです。」「草食系なのね。」「はい。でも僕だって恋がしたい。結婚したいし子どもも欲しいけど、求愛のダンスもできない…嫌われるに決まっています。」「ダンスじゃなきゃダメなの?もっと得意なことは?お料理とか」「だめ。食べ物の好き嫌い激しいですから。」
うーん、なかなか困ったクモさんね!でもよく見ると、黒くて頭とお尻に白いすじが入ってて、ちょっと可愛い。アダンソン・ハエトリという種類だと、あとで日本ハエトリグモ研究センターのサイトを見て知りました。
「ジョロウグモたちは、彼女の背中をさすってマッサージをするそうです。交尾のとき、そうしないと女の子に食われちまうんです。」 えっ!クモの男の子も、生きるのタイヘン!わたしはかわいそうになって、何か手伝ってあげたいと思いました。…そうだ!音楽があると踊れるかも。
風呂場にパソコンを持ってきて、youtubeを検索して、マイケル・ジャクソンを流してみました。けれど、クモはリズム音痴で踊れませんでした。『サタディ・ナイト・フィーバー』はどうかしら…やっぱりリズムが合いません。『踊るマハラジャ』もだめです。レディ・ガガもスヌープ・ドッグもニルヴァーナも、ブラック・サバスもケツメイシも、フレッド・アステアもチャイコフスキーも、どれもだめ。『スパイダーマン』のテーマも、ノれませんでした…。
だんだんめんどくさくなってきて、あきらめかけたところで、「そうだ、民謡!」と思い、よくわからないまま検索して出てきたのが浜口庫之助さん作詞の『有難や節』。
 
金がなければくよくよします 女にふられりゃ泣きまする
腹が減ったらおまんま食べて 寿命尽きればあの世行き
ありが~たや ありがたや~
ありが~たや ありがたや~
 
これって民謡?ふざけてるようで、悲しい歌ね。止めようとしたら、「待って!」 クモが叫びながら、ゆっくりと踊りはじめたではありませんか。ときどき脚拍子を入れながら、けっこう上手に踊っています。
 
近頃地球も人数がふえて 右も左も満員だ
だけど行くとこ沢山ござる 空にゃ天国 地にゃ地獄
ありが~たや ありがたや~
ありが~たや ありがたや~
 
6番まである長い歌を、ついに最後まで絡まずに踊りきることができました。
「ありがとう!僕やっと、自信がつきました。」「よかった。みんないっしょうけんめい生きているんだね。えらいわ。がんばってね。」 「はい!」 クモは片手(脚?)を上げ、ぴょーんとジャンプして、どこかに消えてしまいました。あのクモは、きっと彼女の前で上手に踊れたにちがいありません。
数日後、浴室で母の声が、「ぎゃああああ!!!!」
脱衣所にクモの子が大量発生してました。やれやれ!
 

大人になれない

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 05 01st, 2011   Yowako  

よわこ
今日も、わたしはよわこです。
もう5月の連休…ずっといそがしかったけれど、やっと日記が書けるようになりました。
今日までに、いろいろなことがありました。1ばんの事件は、なんといっても大地震です!
あの日、わたしは母の代わりに、おじいちゃんの家のお手伝いに行ってました。猫のクアチもいっしょです。突然クアチが「ウニャニャニャッ!」って叫んで、わたしの足にしがみついてきました。まもなく、食器棚のお皿がつぎつぎ宙を飛んで、冷蔵庫がドアをばたんばたん開けたり閉めたりしながら歩きだしました。床はぐにゃぐにゃのゴムみたい。おばあちゃんが助けをよんでいるし、いつのまにか寝たきりのおじいちゃんまでフラフラ歩きだすし、わたしはやっと地震だと気づいて、「みんな安全な場所にもぐって!」と叫びながら玄関のドアを開けたり、おばあちゃんといっしょにおじいちゃんをテーブルの下に潜らせたり、自分でもびっくりするくらい、てきぱき動き回りました。あんなにいそがしかったのは生まれて初めて。守るものがあると、怖い気持ちは吹き飛んじゃうみたい。でもあとでテレビを見たら、もの凄く怖くなりました。映画じゃなくて、こんなことが起こるなんて!…あの日、わたしの時間が止まりました。怖いことを『知らなかったわたし時間』が止まって、かわりに『知ってしまったわたし時間』が流れはじめたのです。これが大人になるってことかしら…。北の人たちは、もっともっと怖いに違いない。考えただけで、ドキドキしました。しばらくは心配でお風呂も入れず、寝るときもいつでも逃げ出せるように、いちばん好きなワンピースとソックスを履いて、カバンを抱いて寝ました。
そうそう、もうひとつ事件がありました。新学期の前日、「わーい、明日から高校2年生!」と言ってよろこんでたら、母が「なに言ってんの。あなたはずっと1年生よ。」と言うのです。「え…なんで!」「バーチャルだから、あなたは年をとらないの。『サザエさん』のワカメちゃんといっしょ。」ガーン!そ、そんな…。大人にならなくていいのはうれしいけれど、大人になれないのは悲しい!世界史だって、また『メソポタミア』からやり直しなんてウンザリ!わたしがショックを受けていると、ポケットからヤモリのゲコが出てきて言いました。
「だいじょうぶ。大人になるのと、年を取るのは別のこと。人は年を取らなくたって大人になれるし、反対に、年を取った子どもだっていっぱいいるじゃない。」
なるほど。言われてみれば父と母のお友達は、みんな子どもじみた人ばかりです。母もそう。いつも自分中心で、自分のことばっかり。まるで子どもだわ!「あたしもサザエさんといっしょ。ここにいれば年をとらないの。♪ラララのラ~」「……。」
『こどもの日』なんていらない。『大人の日』をつくればいいのに。やれやれ!

よわこの冬休み

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 01 05th, 2011   Yowako  

よわこ
今日も、わたしはよわこです。
新しい年になりました。今年はどんな年になるのかしら。…平和でありますように!
去年はおじいちゃんが入院してタイヘンでした。無事退院できたけれど、介護度2 から 5へ、いっきにアップ。おばあちゃんひとりでは無理なので、母は実家に単身赴任です。
父は動物園のペンギンやカピバラの撮影で忙しいし、年末の大そうじはわたしがしなくてはなりませんでした。ちぇ。冬休み、お友達はみんなスキーに行ったり、代官山へお買物に行ったりしてるのに、わたしひとりトイレのおそうじです…。まるでかわいそうなシンデレラ。でもきっと、『それはそれはきれいな女神さま』が現れて、わたしを美しい女の子にしてくれるにちがいない! …ところが。「キレイじゃなくて悪かったわねー」と現れたのは、女神さまじゃなくて『トイレの花子さん』でした。ひえ~~~~!
「うらめしやー、呪ってやるー」「どどどどうして!」「トイレが汚い祟りよー」「やめて!きれいにするから!」「じゃあ、はやくおそうじしてー」「は、はい。」 おそるおそるブラシで便器を磨きはじめましたが、手が震えてうまく磨けません。花子さんは腕を組んでじっと見ています。じれったそうにウズウズしながら、「そんなんじゃだめー」とか「腰に力を入れてー」とか、いちいちうるさいです。女の子というよりおばさんみたい。気が散るので無視してたら、ついにブラシを取りあげて、「いーい?便器はカーブにそって、こうやって磨くのー。見てなさーい!」と手際よくゴシゴシこすりはじめました。すると、あっという間にきれいになりました。
「すごーい!お見事!華麗なフォーム!」「ふん!だてに長年ユーレイやってないわよー。学校のトイレは清潔にしなくちゃー。」「あの…ここはわたしの家で学校じゃないんですけど。」 すると、「え。…うそ!また不法侵入しちゃったー!あはは、ごめーん。」と言って、花子さんは煙のように消えていきました。ああ、こわかった。でもおかげでトイレはピッカピカ。新品のようです。…『トイレの神様』って、実は花子さんなのかもしれない。
やれやれ!今年もいろんなことが起こりそうです。

2011年

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 01 01st, 2011   Yowako  

よわこ
今年も、わたしはよわこです。どうぞよろしくお願いします。

宮原芽映 2011年のお知らせ

1/28(金) ライブ @横浜・CLUB SENSATION  » LINK

2/6(日) ライブ @中目黒・FJ’s  » LINK

3/3(木)~13(日) 音楽劇『わが町』 @六本木・俳優座劇場  » LINK

3/21(月)~27(日) イラスト個展 @横浜・吉田町画廊  » LINK

ライバルを探せ

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 12 29th, 2010   Yowako  

よわこ
今日も、わたしはよわこです。
あんなに暑かった夏が嘘のよう!期末テストが終わって、もう冬休みです。
ベランダの花たちも、みんな咲き終わりました。けれど、小さなバラたちだけは、寒い日も元気に咲いています。バラって寒さに強いのね…と思ったら、理由はそれだけではありませんでした。
夏の終わり、バラの鉢がもうひとつ増えました。「バラさん、お友達よ。仲よくしてあげてね。」「…よわこさん。」「なあに。」「…あたくしがおキライだったのね。」「え…」「こんなにいっしょうけんめい咲いて差しあげているのに。ご不満なんだわ。」「なななんで…」「その子をごらんなさい。あたくしとそっくりな大きさ…なのにあたくしより若いだなんて、ひどいわ!まるであてつけよ!」「ち、ちがうの!おばあちゃんが腰が痛くてお世話ができなくなったんで、母がもらってきたの。で、わたしが世話をするハメに…」って、なんでバラに言いワケしなきゃならないの。
先輩バラの機嫌は、なかなかなおりませんでした。「新入りさん、あたくしの真似しないでくださる?」「…あたしの名前はロザリーよ。」「あら!…おほほ!『ロザリー』ですって!マリー・アントワネットの召使いと同じお名前ね。あなたにぴったり。」「おばさんこそ『ヘナ』なんてへんな名前。白髪染めと同じじゃない。」「オ、オ、オバサン?このあたくしにむかって!ゆるせない!よわこさん、こんな子かえしちゃってくださいな!さもないとあたくし病気で死んでしまいます。」「こっちこそ、こんなうるさい女ウンザリ。おばあちゃんのおうちに帰して。」 「ふたりとも!仲よくしないと世話してあげないから!!!」
……怒ったら、やっと静かになりました。
さて、それからがタイヘンです。毎日気をつかって、お水も栄養もホメ言葉も同じだけやらないと、何言われるかわかったもんじゃありません。「よわこさん、あたくしこれから咲きますの。ごらんになって!」「はいはい。」「あたしもよ!ね、見て見て!」「はいはい。」「よわこさん、あたくし綺麗でしょう~?」「はい、きれいきれい。」「あたしは?あたし!」
…張り合っているうちに、バラが満開になりました。おかげで、今年の秋はベランダがいちだんとキレイでした。
やれやれ。ライバルがいるって、いいことだっていうけれど本当なのね。浅田真央だって、キム・ヨナがいたからこそ美しく成長できたっていうし。わたしもライバルを探さなくちゃ。
…でも、わたしのライバルって?

さかなさかなさかな?

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 10 21st, 2010   Yowako  

よわこ
今日も、わたしはよわこです。
父にたのまれて、晩ごはんのおかずを買いにスーパーにきました。今日は少し暑いですが、中はひんやり気持ちいい。えーと、何を買うんだっけ…メモを見ると、サンマ、グレープフルーツ、ネギ、牛乳、…うえ~おとうさんたら、いったい何を作るつもり?
スーパーでは、いろいろな音楽が聞こえてきます。五反田の東急ストアは、なぜかマリアッチが流れていて、おじさんたちの巻き舌のかけ声がにぎやか。店員さんが、ソンブレロかぶって踊りながら出てきそう。おばあちゃんちの近くのマルエツは、よく聞くと男の人が韓流ドラマ風な甘いラブソングを歌っていますが、誰も聞いてなくてかわいそう。
大崎百反通りのライフに行ったときは、たまたまポイント3倍の日で、♪「ポイントポイントポイントポイント、さんばいさんばーい」って、しつこくリピートしてました。お店を出たあとも、「ポイントポイント…」とつい歌ってしまうので困りました。ベルリンから、母のお友達のトンマおばさんがきたとき、「日本の街はどこにいっても音が鳴って、なんてやかましいの!」と言っていましたが、ドイツのスーパーはちがうのかしら…。
魚売り場には、『おさかな天国』がリピートしています。 ♪「さかなさかなさかなー 魚を食べるとー あたまあたまあたまー 頭がよくなるー」のあの歌です。以前はどこのスーパーでも流れていたので、築地の魚市場へ親子で見学に行ったこどもが、「おかあさん、なぜここは歌が聞こえないの?」と言ったそうです。 『おさかな天国』を作曲した柴矢俊彦さんは、ジューシー・フルーツというバンドのギタリストだった人で、なんと母の古いお友達でした。歌っているのは奥さんの裕美さん。わたしはお会いしたことありませんが、母は毎年年賀状をいただいているんだって。あーびっくり!世界はせまい~♪ 『おさかな天国』は、一時『たらこ・たらこ・たらこ』におされてました。たらこを作曲したのは、ゲルニカの上野耕路さん。どうりで妖しげなマイナー調。母は、「ジューシー・フルーツとゲルニカの対決!」なんて喜んでいましたが、魚の方が種類がたくさんあって優勢みたい。
『さかな』も『たらこ』も、『だんご3兄弟』も、『メロンパンのうた』も、同じ言葉をなんどもなんどもくりかえすから、別に聞こうとしなくても、耳からはなれなくなります。そのうち『牛乳の歌』とか『納豆の歌』とか『こんにゃくの歌』とか『にんにくの歌』とか、スーパーじゅうの商品が歌いだしたらどうしよう…!トンマおばさんじゃなくたって、やかましくて耳をふさぎたくなるに違いないわ!
今日も魚売り場では『おさかな天国』が流れてきます。だけど、なんか、あれれ… 
♪「くじらくじらくじらー 鯨を食べるとー あたまあたまあたまー 頭をたたかれるー くじらくじらくじらー 鯨を食べるとー なかまなかまなかまー 仲間はずれさー」
「鯨は魚じゃないわ!」と言ったら、ピタリと止まりました。空耳かしら?
…やれやれ!

われ泣きぬれて…

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 08 04th, 2010   Yowako  

よわこの日記80
今日も、わたしはよわこです。
7月は暑かったです。だからというわけではありませんが、期末テストはさんたんたるものでした。けど、わたしだけじゃなかったみたい。担任のオダワラ先生が、怖い顔をしてみんなに言いました。
「おまえらー、なんだこの成績は!こんなことだから、『ゆとらー』などと言われて世間からナメられんだぞ!罰として、夏休みに現国の特別授業を行うことにする。」「え~~~!」みんなから、不満の声があがりました。「先生、俺たち、ゆとらーじゃないっす。」「そうです、世間からなめられたって、幸せならいいと思いまーす。」「夏休み、バリ島行くんで出席できませーん。」「あら、すてき!うちはハワイよー。」「だ、だ、だ、だまれ~~~!だいたいおまえらは (長いので省略)」
というわけで、みんなそれぞれ文学作品の研究発表をすることになりました。わたしの課題は、『石川啄木の短歌を一首選んで、解説すること』です。どどどうしよう…。みんなの前で発表するなんて!
うちに帰ったら、新潟から親戚のナスおじいちゃんが泊まりに来ていました。「おじいちゃん、おひさしぶり。暑くて大変ね。」「あちこたねー。笹ダンゴこうて来らったぞ。よわこちゃんは、元気じゃったかえ?」「それが、じつは…」わたしは、気が重い研究発表のことを話しました。「ふむ。石川啄木は、立派なええ歌人じゃ!啄木といえば、これがもっとも有名じゃな。」
 
『東海の 小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる』
 
これならわたしも知っています。教科書にものってるし。でも、知らない人が書いた短歌を解説しろと言われても、どうしていいかさっぱり。斉藤和義の歌ならわかるんだけど…。「おじいちゃん、この人なんで泣いてるの?」「さあ~、ひでえ貧乏だったか、女にふられたのかも知れんの。」「たはむるってどういう意味?」「遊ぶという意味じゃろ。この歌は、大きな海の風景が、だんだん小さく絞り込まれてゆくのがミソじゃ。」「そうか!まるでカメラのズームインね。」「浜辺で泣いとるだけなら誰にでも書けるが、最後に蟹を出すことによってレアレテーが生まれる。」「れあれてい?…わかった!リアリティのことね。カニじゃなきゃダメなの?」「ウニとたわむれても絵にならんじゃろが。」「ヤドカリは?イソギンチャクは?」「そりゃ、字余りじゃ。」「たまたまそこにいたのが、七五調にぴったりの蟹だったなんて、できすぎてる気もする。」「嘘でもええんじゃよ。詩的真実と言ってな、創作に限って、嘘は心を伝えるための手段なのじゃ。」「なるほど。」「これも、啄木の有名な歌ぞ。」
 
『友がみな 我より偉く見ゆる日よ 花を買いきて 妻としたしむ』
 
「… わたしはこっちのほうが好きかも。」「ほう。どんげして?」「うーん、なぜかわからないけど、リアリティを感じる。それに母がよく、『今日はパッとしないから』と言って、突然お花を買ってくることがあるわ。」「そりゃええ、そんなら、この歌を発表せえ。」…あとで検索してみたら、石川啄木という人はとても貧乏で、なのに、友達が一生懸命かき集めて貸してくれたお金で芸者さんと遊んだり、結構ヒドイ人だったみたいです。そんなことしていたら友達がみんな偉く見えて当たりまえです。おじいちゃんによると、昔の天才たちは、だっちもしねえ(どうしようもない)やぼこき(ワガママな人)も多かったんだって。ロック・ミュージシャンみたいなものかしら。

いよいよ発表の日。わたしの番がきました。ナスおじいちゃんのおかげで、わたしは自信を持って教壇にあがりました。ところが、「友がみな」の短歌を黒板に書くと、みんながクスクス笑い出しました。あれれ、なんでだ~?見ると、オダワラ先生が真っ赤になって怒っています。「お、お、おまえは、そんなことだからゆとらー…うう、もういいっ、席に戻れっ!」え。な、なんで?なんで怒ってるの?せっかく研究してきたのに…。黒板を見たら、わたしはこう書いていました。
『友がみな 我より偉く見ゆる日よ 花を買いきて 妻とたはむる』
し、しまった!間違えた!「したしむ」と書いたつもりだったのに、先の2首が頭の中で合体してしまったのです。
あー恥ずかしい、啄木さん、ごめんなさい…。落ち込んで帰ったら、ナスおじいちゃんが「どうじゃった?」と聞くのでわけを話しました。「うぉーっほっほー!そりゃあええ、傑作じゃ!妻とたわむる…むふふ。啄木の歌より、レアレテーあるわい!」
おじいちゃんだけは、とても大喜びでした。…やれやれ!

よわこの日記79
今日も、わたしはよわこです。
ついに新しい洗濯機が、家にきます。古いのが壊れたので、きのう父とビックカメラで買いました。乾燥機付きの素敵な洗濯機がずら~っとならんでいましたが、父が「今までと同じ大きさじゃないと置けない」というので、結局それは1台しかなくて、迷うこともありませんでした。真っ白でシンプルだけど、カワイイ洗濯機です。
新しいものがくるのはワクワクします。けれど、そこにあってあたりまえだったものがなくなるのは、少しサビしい気がします。古い洗濯機は、わたしが生まれる前からずーっとそこにありました。白い色がすっかり黄ばんで、なんだかみすぼらしい。はじめはきっと新品だったのに、ずいぶん長い年月働いてきたんだもんね。よく見ると、こんなところにも傷が…。 イケナイ!じーっと見ていると、情が乗り移ってしまいそう!あわてて目をそらしましたが、遅かった。情が移ったとたん、洗濯機が喋りだしました。
「よわこさん、長いあいだお世話になりました。」「…いえいえ。こちらこそ。」「20年もの間、私はここの家に置いていただきました。思いおこせば、よわこさんのオムツカバーからはじまって、パンツ、幼稚園のうわっぱり、体操着、学生服のブラウス、ご愛用の黒いルーズソックスも、ご家族の思い出とともにくりかえしくりかえし、洗ってまいりました。」「やめて。そんなこと言ったら、お別れがつらくなるじゃないの。」「初めてのブラジャーを洗った日の感動は、今も忘れません。たしかサクランボの柄…」「や、やめてってば!」「よわこさんの成長は、ここでご奉公する私にとって、何よりも楽しみでした。ですが、これも浮世の常。さだめに背き、引き返すは恥。私は役目を終えて、ひっそり消えていきます。」 …まるで篤姫の乳母ね。ところが、洗濯機はなかなかひっそり消えてくれそうもありませんでした。
「私のことは忘れて、みなさんどうかお幸せに。」「わたしたちも、あなたのこと忘れないわ。」「…ありがとう。でも、気休めはやめてください。新しいものが来たら、私のことなんて、みなさんすぐにお忘れになるでしょう?」「そ、それは…。」 きっとそうだ、と、わたしも思いました。「『小惑星探査機はやぶさ』は、7年働いてみんなから注目されて消えていきましたが、私は20年働いたって誰からも注目してもらえません。しょせん家電は家電。スターにはなれないのです。」「はい…。」「今度生まれてくるときは、人工衛星になって宇宙を回転するのが、私の夢です。いつか、空を見上げて想像してみてください。この私が、ワールドカップの衛星放送に貢献しているかもしれません。フレーフレー、サムライ・ブルー!フレーフレー、メイド・イン・ジャパン!」「…。」 20 年たまりにたまった告白は、まだまだ続きそうでした。
そこへピンポーンとチャイムが鳴って、取り付け工事のおじさんが2人、新しい洗濯機を抱えながらやってきました。ああよかった、助かった!「こんなに古くなるまで、よくがんばったもんだなあ。」 ホースを抜いて、持ち上げて、外に運び出して、入れ替えて…あっという間に取り付け完了です。「これが保証書です。ハンコお願いします。」「ハイ。ご苦労さま。」 玄関の外に出て、洗濯機を乗せた黄色いトラックを見送りました。古い洗濯機はどこへ行くんだろう…。聞いてみたい気もしましたが、忙しそうなのでやめました。
そのときです。御殿山の上のほうから大きな円盤が飛んできて、トラックの上に来たかと思うと、洗濯機がみるみる浮き上がっていくではありませんか。よく見ると、『SONY』とロゴの入った円盤でした。「ややや!こ、これはいったい?!」「私はこれからリサイクル星に行って生まれ変わる日を待ちます。よわこさん、またどこかでお会いしましょう。幸せな日々をありがとう。ティッシュをポケットに入れたまま洗濯しないように。さようなら~~~!」 洗濯機を乗せた円盤は、東京タワーをよけて、ピカッと光りながら灰色の雲の中へ吸い込まれていきました。
…やれやれ!機械を買い換えるのも、タイヘンなのね。