あちこたねぇ
Single
shiro
Maxi Single
宮原芽映
Port・fo・lio
MariPosa
2枚ワンセット
Copyright © 2007 - 2018 宮原芽映
MIYAHARA Mebae All Rights Reserved.

よわこ yowako.com 宮原芽映 オフィシャルサイト

水族館裏

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 06 16th, 2008   Yowako  

よわこの日記 030
今日も、わたしはよわこです。
今日は父の日。「さあ、仕事仕事!」…父は朝から、パソコンに向かっています。父の日でも、締め切りは待ってくれないのです。お父さん、大変ね…。「何か欲しいものある?」と聞いたら、「コーヒー!」と返事が返ってきました。わたしは、父の好きなコーヒー豆を買いに、品川へ行きました。
買い物の帰り、エプソン・アクアスタジアムの前を通りました。ここは、プリンスホテルに隣接した水族館で、映画館の並びにあります。ちょうどアトラクションが終わって、お客がぞろぞろ出てきました。ほとんどが、親子連れです。どのお父さんも、なんだか疲れてるみたい。やっぱりお父さんは、大変なんだわ…。
わたしは、人気のない水族館裏のベンチを見つけて、100円マックを食べました。すると、バンドウイルカとアシカが出てきて、ベンチで煙草を吸いはじめました。「もォ、やってられないわ!毎日同じ事ばかり!」…イルカが言いました。「そろそろ演出変えないと、江ノ島に負けるかもな。」…アシカが言いました。「運動音痴のイルカ(アクアスタジアムのスター)なんて、子供はすぐ飽きるわよ。」 「鴨川シーパラは超能力のシャチだってさ。」 「あいつらに超能力だって?ふん!笑わせるわ!」…なんだか険しい雰囲気。「ねえ、そこのイワシちゃん。」イルカが言いました。ドキッ!…わたしのことみたい。「なにもってんの?」 「せ、成城石井のコーヒーと、カルディの生ハム… 父の好物です。」どうしよう…欲しいのかしら?あげないとわたしが食べられちゃうかも…。「ふーん、今日は父の日か…。」イルカが、煙を吐きながら言いました。「地球温暖化が進んでいるのに。気楽なもんよね、人間は。」 「す…すみません。」 「ねえ、(アシカに)あんたパパの顔覚えてる?」 「うちの親父は、奥さん14頭いたからなあ…。顔なんて見たことないよ。」 「ハーレムね。あたしのパパ、今はフロリダだってさ。」わたしは、思わず質問しました。「どうしてわかるんですか?」 「ふん。あたしたち超音波で、毎日世界中のイルカとチャットしてんの。SNSなんて目じゃないわ。」 「そういえば…」と、今度はアシカ。「スピード社の水着が承認だって。」 「ミズノは大損ね。」 「北京じゃ新記録ラッシュだろうな。」 「キタジマがどんなに頑張ったって、しょせんあたしたちにかないっこないわよ。」…すごい。マイクロソフト・ニュースみたい…。「今度のポスター、きれいに出来たわね。」 「やっぱエプソンだな。」 「HPもいいけど、インクが高いそうよ。」…いつまでこんな話が続くのかしら。わたしは、そろそろ開放してもらえないかなあと考えてました。そのとき、「イルカさん、出番ですよ~!」と、ペンギンが呼びに来ました。よかった…!やっと帰れそう。
アシカはあくびしながら、「あ~、オレはまだ時間あるな。『インディ・ジョーンズ』でも観ていくか。」 「じゃあね。イワシちゃん、ハンバーガーは体に悪いわよ。もっとマシなもん食べなさい。」 「は、はい。(煙草はいいのかしら…)」 「可愛いフリしなくちゃ。さあ、仕事仕事!」イルカはぴょんぴょん弾みながら、行ってしまいました。…やれやれ、水族館の動物たちも大変みたい。

デート・デビュー ③

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 06 10th, 2008   Yowako  

よわこの日記 029
そして今日も、わたしはよわこです。
「今日からあたしを、ユリって呼んでね。」…金髪で、おかっぱ頭のニシ先輩が言いました。ひえ~~~~びっくり。モヤイ像が空飛んだって、こんなに驚かないかも。まるでウサギの穴に落っこちた気分だわ。やっぱり、からかわれてるの?
「では、お買い物に行きましょう!」先輩はさっそうと、ハチ公前のスクランブル交差点を歩き出しました。ところが、ロングスカートに脚がこんがらがって、いきなりどすんと倒れてしまいました。「大丈夫ですか!」 「ご、ごめんなさい…大丈夫。」立ち上がった瞬間、今度はサンダルのかかとを踏みはずしてよろけました。これが、あのサッカー部のエースかと思うほど、不器用な感じ。そこらへんの女の人よりきれいだけど、先輩は背が高すぎ、誰が見たって男の人です。わたしはすれ違う人たちの目を気にして、ドキドキしました。でも、よかった。みんな無関心な顔で通り過ぎていきます。
「よわこちゃんなら、きっとお友達になれると思ったの。」…え?それってどういう意味?同じ髪型だから? Bunkamura通りを歩きながら、先輩は告白しました。小さい頃からずっと、女の子になりたかったこと。親に内緒で『ユリ』に変身して町を歩くのは今日で4度目。だけど、実行するのに6年もかかったこと。本当は時間通り来たのに、声かけるのをためらって、デパートを8周もしたこと…。こんな話を聞くと、女の子にモテモテのニシ先輩が、まるで『よわこ』と同じです。そうか、先輩もわたしと同じ『よわこ』だから、デートに誘ってくれたのね。なあんだ!謎が解けたわ。ちぇ。
ユリさんは、東急本店4Fのローラアシュレイに入りました。さすがはイギリス育ち!109じゃないのね!
「見て見て、このワンピース綺麗!」赤いバラの花模様のワンピースを試着して、ユリさんはゴキゲンです。「どう?似合う?」 う~ん…どう考えてもやっぱりヘン。わたしは、思いきって質問しました。「ニシ先輩は、サッカーが上手でカッコイイのに。どうして女の子の服なんか着たいのですか?」こんなこと聞いて、嫌われるんじゃないかと思った。ユリさんは少しびっくりして、それからニッコリ笑って、「ワンピースを着たときのほうが、サッカーのユニフォームを着たときより、ずっと自分を好きになれて、幸せな気分になれるから!」…きっぱりと答えました。
彼女が彼だってこと、お店の人は気づいてたはず。でも、もうそんなこと、どうでもよくなりました。だって、お気に入りのドレスを見つけたユリさんは、誰が何と言おうと幸せそう。「このドレス可愛い!よわこちゃん着てみたら。」フリルのいっぱいついた、お姫様みたいな服をすすめられて試着したけど… どう見ても似合いません。わたしの方が女の子なのになあ… どうやら、幸せになれる服じゃなさそうだ。
帰りにユリさんはスタバでカプチーノをおごってくれて、バス停まで送ってくれました。「よわこちゃん、今日はつきあってくれてありがとう!じゃあね、バーイ。」先輩はそう言ってわたしの両頬に、ほっぺたをくっつけました。外国映画に出てくる、お友達同士のキス。そしてローラアシュレイの手さげ袋を持って、よろけながら人ごみに消えていきました。そのとき渋谷駅が、なぜか一面バラのお花畑に見えました。
 …やれやれ、初めてのデートはこれでおしまい。バスに乗っても、まだウサギの穴から抜け出せない気分。でも、わたしは考えていたのです。昨日までの『舶来王子』より、ユリさんの方が好きかもしれないって。

デート・デビュー ②

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 05 23rd, 2008   Yowako  

よわこの日記 028
次の日も、やっぱりわたしはよわこでした。
いよいよデートの日。…気が重いです。2時に渋谷のモヤイ像前へ行きましたが、ニシ先輩はまだ来てませんでした。東横デパートを3周したけど、先輩は来ません。もしかして電車が遅れたのかも…。「3回まばたきして、目を開けたら、きっと来る!」やってみたけど、先輩は現れません。もしかして蒲田駅前のモヤイと間違えたのかも…。「あと3台バスが出てったら、きっと来る!」5台見送ったけど、やっぱり来ません。もしかして、からかわれたのかも……………。
だんだん自分が、世界でいちばんみすぼらしい女の子に思えてきました。ほかの女の子たちは、次々と王子様が現れて去っていきます。みんな幸せそう。だいたいあんなかっこいい先輩が、わたしなんかをデートに誘う理由がないのです。寒い風が吹いてきました。いつのまにか吹雪になって、5月というのに、わたしだけ真っ白い雪に埋まってしまいました。すると、
「寒いからやめてくんない。」背後から、モヤイが言いました。「寒いこと考えたでしょ、今。」「え?…はい。」「オレ寒いの苦手なの。新島出身だから。」「 モヤイさん、イースター島じゃないんですか?」「あれはモアイ。ここに書いてあるから、よく見な。オレたちの故郷は新島よ、サーフィン天国よ。のお、インジイ。」「おーよ。」返事をしたのは、反対側のインジイ(おじいさん)です。モヤイの裏に、もうひとつ顔があるなんて知らなかった!よく見ると小さな立札があって、『モヤイ』とは新島の言葉で『力を合わせること』とあります。
「おじょーちゃん、オレとモヤらない?…なーんちゃって。」「……」「彼氏にフラれたか。かーいそーに。キャラメルマキアート奢ってやろーか。」「…結構です。」「暇つぶしに、オレの話、聞いちっちくれねーか?」返事も聞かずに、モヤイは喋りはじめました。新島の海がどれほど美しいか。ウンバア(おばあちゃん)のシイッコ汁(カメノテの味噌汁)が、どれほど旨いか。毎日渋谷の空を見上げながら、どれほど新島に帰りたいか…。「いしゃあ(君は)、オレたちに比べりゃー、ずっとましじゃ。オレもインジイも家族や仲間と引き離されて、突然見知らぬ都会に連れてこられたのよ。あークニに帰りてー。アシタバ食いてー。アカイカ食いてー。ちーちっち(連れてって)。ここはGKK(ごっつ空気汚い)で、MK1(マジギレ1秒前)だっちゅーの。のお、インジイ。」「おーよ。」…やれやれ、新島弁と渋谷弁がごちゃまぜだわ。
「覚えててくれ、じょーちゃん。いつかクニに帰るのが、オレの夢じゃ。」「どうやって帰るんですか?」「決まってるだろーが。台風の大波に乗っていくのよ。♪サーフィンU.S.A、イエ~。」「大波ったって…」「今日はいい波来なくても、明日はくるかもしれない。…信じればこそ、人は生きられるのじゃ。あきらめたらそれまでよ。うじうじ考えてるとチャンスが逃げてくぜ。人生に同じ波は二度と来ないのよ。」「はあ…。」「ある日、渋谷からモヤイが消えたというニュースを見たら、オレたちが故郷に帰ったと思ってくれ。」わたしは、サーフボードに乗って、台風の空を飛んでいくモヤイ像を想像しました。ス、スゴいかも…。「お、誰か来たようだ。じゃーな、じょーちゃん。新婚旅行は新島にしな!」「おーよ。」モヤイたちは黙って、石に戻りました。
「遅くなってごめんなさい。」振り向くと、知らない人が立っています。金髪のおかっぱ頭の女の人。なあんだ、がっかり。人違いと思ったら、「あたしよ、よわこちゃん。」 ななななんと!その女の人こそ『舶来王子』…ニシ先輩だったのです。(つづく)

デート・デビュー ①

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 04 30th, 2008   Yowako  

よわこの日記 027
今日も、わたしはよわこです。
サッカー部のニシ先輩から、「明日の休日、一緒に買い物行かない?」と誘われました。「渋谷のモヤイ像前で、2時ね。」…なにこれ。もしかして、デートのお誘い?
どどどどどどうして!? 先輩は高校一のハンサムで、背が高くて、サッカー部のエースで、おまけにイギリス育ち。『舶来王子』と呼ばれる、女の子の人気者です。なななななんでわたしを!? どどどどどどうしよう!デートをするのは生まれて初めて。デートって、ところでいったい何すればいいの?買い物してお茶飲んで、どんなお話すればいいんだろう?サッカーのことなんてな~んにも知らない、今から検索して勉強しても間に合いません。父に話してみたら、パソコンに向かったまま「いつもどおりでいいんじゃない。」と、そっけない返事。母に話したら、突然ギターを抱えて、山本リンダの『こまっちゃうナ』(作詞作曲:遠藤実)をマーク・ボラン調で歌い始めました。 ♪ 「ママに聞いたら~なんにも言わずに笑っているだけ あはは~ん げりろ~ん げりろ~ん」 やれやれ、ふたりに頼ったわたしがおバカさんだったわ!
心臓がお祭り騒ぎで、その夜は寝られませんでした。わたしは、信じられないながらも、ひそかな期待を抱きました。あんなにかっこいい先輩から誘ってもらえるなんて、ついにわたしは、よわこでなくなる日がきたのかもしれない…。(つづく)

50年後

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 04 14th, 2008   Yowako  

よわこ
今日も、わたしはよわこです。
桜満開のとき、公園の桜の下で、おばあさんが3人集まってお花見をしていました。となりのベンチで爽健美茶を飲んでいたら、おばあさんたちの会話が聞こえてきました。
「きれいねえ。」「ほんとねえ。」「さやかちゃん、来られなくて残念だったわね。」「しかたないわよ、ギックリ腰じゃ…。」それからしばらく、持ってきたお弁当を食べながら、リハビリの話に花が咲きました。
「そういえば新しいリハビリの機械、あなた知ってる?」「あれね、整骨院で聞いたわ。」「そう、あれよ。私買ったけど、超すごいのよ。」「どんなふうに?」「車椅子がマッサージ・ロボットに変身するの。」「へえ~。まるで映画の『トランスフォーマー』ね。私観たわよ。シリーズ49。」
……え?『トランスフォーマー』は、先日DVDで見たばかり。シリーズ49なんてあるの?…聞いてるうちに、わたしはなんか変だなあと思いました。
「『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、シリーズ53よね。」「よくやるわ。ジョニー・デップ、もう90過ぎよ。」「うっそォー!あんなにセクシーなのにィー?」「特殊メイクでしょ、きっと。」
……これはヘン、絶対ヘンです。すると、ポケットの中からヤモリのゲコが顔を出して、あれは『50年後の女子高生たち』だと、言いました。ほ…ほんとだろうか?
「メイクといえばさあ、あなたスゴかったわよね。50年前の、あのガングロ!」「まあ。オホホ…うちの孫が写真見て『オバケ』ですって。そう言うあなただって。」「あたしはアキバ系でしたもの。」「メイド喫茶、懐かしいわねえ…」
……やっぱりほんとうみたい。わたしは手にしたペットボトルを、あやうく落とすところでした。
「今思うと、よくまあ、あんなに頑張って厚化粧できたものよねえ。」「電車の中でもねえ。あれ大変だったわよ…なんてったっけ…まつげビューラー!」「近頃じゃめんどくさくて、化粧どころか口ヒゲも剃らないのにねえ。オホホ…」
……どうしよう。わたしはどきどきして、その場を立てなくなりました。
「そのイヤリング、素敵ね。」「電話付き補聴器よ。音楽も聴けるのよ。」「へえすごい。メールはどうすんの?」「送るときは、喋ればいいの。内蔵マイクが感知して、自動的に文字に変換されるの。英語にも翻訳できるのよ。」「それってスゴすぎ。」「…ただ、困ったことがあってね。関西弁は翻訳できないの。教科書みたいに発音しないと、ヘンな文章になるのよ。」「難しそうねえ。」「『田町』が『ハマチ』になったり、『浜松町』が『甘納豆』になったり。」「笑える~。」
そのとき、一人のおばあさんが、メガネをいじりながら言いました。「あたしのは、立体カメラ付きよ!」おばあさんがメガネをこすると、青い光線がパーッと出てきて、目の前に小さな男の子が現れました。「孫の太郎よ、かわいいでしょう?」
「あら大変、嫁からメールだわ。」イヤリングのおばあさんが、あわてて言いました。「なんだって?」「早く帰ってこいって。」「まだ、来たばかりじゃない。」「ごめんなさいねえ。気がきかなくて。」「うちの嫁もそうよ。困ったもんだわ、まったく。最近の若い人たちときたら。」
おばあさんたちはベンチから立ち上がりました。「あら、あなたまだルーズソックス履いてんの。」「だってあったかいんだもん。」
「じゃあ、またね~。」「また来年も、一緒にお花見しましょうね。」そう言って、おばあさんたちはピンクに霞んだ桜並木の向こうへ消えてしまいました。
…あーびっくりした。やれやれ。満開の桜の下では、どうやら不思議なことが起こるみたいです。不意に風が吹いて、花びらがひらひら、飛んでゆきました。わたしは50年後の自分を想像してみました。…けど、まったく想像できませんでした。

電話で木ッス

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 03 21st, 2008   Yowako  

よわこ D025
今日も、わたしはよわこです。母の個展が終わったので、やっと日記を更新できました。やれやれ。
るすばんしてたら、電話が鳴りました。受話器をとると男の人の声で、「こいのぼり証券のスズキと申します。ご主人様はご在宅でいらっしゃいますか?」と、とても丁寧な話し方です。なのでわたしも、「父は留守でございます。」と丁寧に答えました。すると、「なんだ娘か、じゃ、用はないや。」ガチャッ!プー、プー、プー、…な、な、なんなのだ、これは!
しばらくすると、また電話が鳴りました。今度は女の人の声で、「クーラーのお掃除のキャンペーンです。今ならお安くお試しいただけます。奥様でいらっしゃいますか?」「いいえ、娘です。」と答えると、「あーら、お嬢さんじゃダメね。」ガチャッ!プー、プー、プー、…切れてしまいました。まったく、失礼な人たち!いいわ、とりあえず「娘です」って答えれば、しつこくされることはないんだから…!
しばらくして、またまた電話が鳴りました。「ゴシック化粧品のものですが…」「わたしは娘です。」「よかった!今日はお嬢様にお勧めの、電車内化粧セットのご案内です。」「えっ?」「これなら電車が揺れても、完璧にお化粧できます。今なら目線跳ね返しミラー付きでなんと1万5千円…」「わたしは化粧はしません。」ガチャッ!…今度はこちらから切りました。
それからも、電話が鳴りつづけました。「宮原先生のお宅でいらっしゃいますか?」「母は教師ではありません。」ガチャッ!プー、プー…。「分譲墓地のご案内ですが…」「父はチベットで鳥葬するから、お墓はいらないそうです。」ガチャッ!プー、プー…。保険、不動産、互助会、エステ、サプリメント、聖書、毛ガニ、と、ひっきりなしです。わたしは腹が立ってきました。こんなことをしていたら、だんだん自分が性格の悪い、嫌な人間になりそう。
またしても電話が鳴ったので、「いいかげんにして!」と言おうとしたら、「イエスって言ってください。」「は?」「お願いだから、僕にイエスと言ってください。」優しそうな男の人の声です。「…キリストですか?」「宗教ではありません。イエス・オア・ノーのイエスです。イエスと言ってくださったら、木を1本植えます。」「木って…どこに?」「それは言えません。地球上のどこかです。お金は要りません。イエスと言ってくださるだけでいいのです。」…な、なに?この人、頭が病気なのかしら。それとも、新種のいたずら電話?「… ノーと言ったら?」「木は植えません。」「じゃあ、イエス。」「ありがとう!あなたはいい人です!これで地球が救われます。さようなら!」ガチャッ!プー、プー、プー…。それからまた電話が鳴りましたが、わたしは出るのをやめました。電話は鳴り続けています。「うるさいなあ…そうだ!」
夜になって宿題をやっていたら、母が帰ってきました。キッチンから叫び声が聞こえます。「ぎゃーっ!誰―?! 冷蔵庫に電話機しまったのーっ。」
わたしは、地球のどこかにあるかもしれない、1本の木のことを考えました。あの人はほんとうに木を植えるのだろうか?これでほんとうに地球が救われるのだろうか?ほんとうだったら素敵だけど、こんなに簡単なことではいけない気もします。だけどやっぱり、嘘じゃないと思いたい。…この日以来、わたしの頭に1本の木が植えつけられました。

猫のみる夢

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 02 24th, 2008   Yowako  

よわこ D024
今日も、わたしはよわこです。
朝起きると、肩こりがひどくなりました。原因は、猫のクアチです。夜中に寒くなると、わたしの枕を占拠して寝ていたのです。どうりで、おかしな夢ばかりみると思った。隣のクラスのサナミちゃんに話したら、「どんな夢?」と聞かれましたが、憶えてません。すると、「猫のみる夢を見られるかもよ。」とサナミちゃんが言いました。「え?…猫の出る夢?」「そうじゃないの。猫が見てる夢をヒトが見るの。」そして、田舎のおじいさんが体験したお話をしてくれたのです。
≪ある春の日、おじいさんが縁側で昼寝をしてたときのこと。うつらうつら、いい気持ちで夢の中にいると、モヤモヤした部屋の真ん中に、ぼうっと細長いものが見えた。何だろうと思ってよーく見ると、それはメザシじゃった。「メザシが一匹、誰が置いたのじゃろう。わしは、なんでメザシの夢なんか見とるんじゃ?」考えながら目を覚ますと、おじいさんの顔の上に、なんと猫の顔があるではないか。飼い猫がおでこに覆いかぶさるようにして、一緒に寝ていたのじゃった。「そうか… よーくわかった。こいつが見ている夢を、わしも同時に見ておったのだ!」おじいさんは納得して、猫にメザシをあげたそうじゃ。…むかしむかしのことじゃった。≫おじいさんて、常田富士男さんかも…。
すてき!だったらわたしも、クアチのみる夢を見られるかもしれない。今夜はどんな夢を見たか憶えておこう、絶対!決心したら緊張して、夜は眠れませんでした。やっと眠りかけたとき、クアチが枕元にやってきて、わたしのほっぺたに頭を乗っけてスースー寝息を立てはじめました。うふふ、くすぐったい!…気がつくと夢の中にいました。そこはモヤモヤした部屋の中。ぼうっと細長いものが見えます。やっぱりメザシね。クアチの食いしんぼう…。ところが。よく見ると、それはメザシじゃなくて歯磨きチューブでした。あれれ、なんで?そういえば、寝る前に歯を磨くのを、すっかり忘れてました。なーんだ、これはクアチじゃなくて、わたしの夢なのね。「ソノトオリ!ハヲミガケ!」と、歯磨きチューブが立ち上がって喋ったからびっくり。「ハヲミガケ!ハヲミガケ!」いつのまにかぞろぞろ出てきて、まわりを取り囲んでいます。「ひえ~。ごめんなさい。許して…」歯磨きチューブたちは、いっせいにフラダンスをしながら歌いだしました。♪「ハヲミガケ アロハオエ ハヲミガケ カメハメハ ムシバヒラヒラ カイマナヒラ~」 …どうしよう、起きて磨かないと、虫歯になっちゃう!でもねむいよう…でも起きなきゃ…でもねむい…ムニャムニャムニャ…。目が覚めると、すっかり朝でした。あー肩こった。やれやれ、ヘンな夢。だいたい猫のみる夢なんて、見られるはずがないんだわ!そうだ、歯を磨かなくちゃ…洗面所に行くと、クアチがフラダンス踊りながら歯を磨いてました。

おそうじハイ・ホー

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 02 18th, 2008   Yowako  

よわこ D023
今日も、わたしはよわこです。
いよいよイラスト展の追い込み…母は部屋に閉じこもったきりです。「ああ、恥ずかしい!」だの「バカヤロー」だの「がんばれ宮原」だの、ときどき独り言が聞こえてきます。絵を描きはじめると、ふいに昔の事や、嫌なやつの顔とかが頭をよぎるんですって。そのうち調子が乗ってくれば、静かになります。ほーら、おとなしくなった。きっといい絵が描けてる証拠です…と思ったら、いびきが聞こえてきた。だめだわコリャ。
母がこんななので、父とわたしが家事を一切しなくてはなりません。父が料理をするのはいつもの事。わたしは『しっかりした娘』という事を、証明できるチャンスです。こないだのおでんはジャガイモ入れ忘れたけれど、汚名返上、リベンジしなくては…!「おとうさんたら書類をこんなに散らかして、仕方ないわねえ…。」なんだか口ぶりまで母に似てきました。書類をきれいに積み重ねたら、次はお掃除です。「まあ!新しい電気掃除機。ピカピカの日立マークだわ。やっぱり!」『掃除機は日立、炊飯器はサンヨー』」というのが、母方のおばあちゃんの家訓です。スイッチ入れたら、グィーングィーン、よく吸い込むこと!掃除機ギライな猫のクアチが、すっ飛んで逃げていきます。わーい、気持ちいーい!♪「ハイ・ホー、ハイ・ホー、仕事が好き」 わたしは白雪姫に出てくる『七人の小さい人』のように、歌いながら家中お掃除しました。ところが……。ズボッという音がして、「キーッ」という悲鳴とともに、何か柔らかいものが吸い込まれていきました。な、な、なんたること!ベッドの下でお昼寝中の、ヤモリのゲコを吸い込んでしまったのです。あーあ、やっぱりわたしは何をやってもダメな子、ちりとてちん…。ごみパックの中からホコリまみれのゲコを救出すると、ゲコは咳き込みながら「M74銀河を旅して、ついにブラックホールを見た!」と言いました。見ると、ごみパックの穴から真っ黒いものがぶら下がっています。…ずっと探してたわたしの靴下でした。そぉっと引っぱり出すと、出るわ出るわ、ハンカチ、口紅、指輪、父の目薬、使い捨てカイロ…なんと、高島屋の商品券まで出てきました。…やれやれ、おかあさんたら。こんなに吸い込んじゃうなんて!…あー安心した。これならわたしのほうが、ずっとましだわ。♪「ハイ・ホー、ハイ・ホー」歌いながら掃除機のスイッチを入れたとたん、ズボズボッ。父の書類を吸い込んでしまいました。